こんにちは。院長の波木です。
私が好きなクラシックの作曲家を順位づけすると、
バッハ、ラフマニノフ、ベートーヴェン、ブラームス、ショパン、
ラヴェル、ドビュッシー、プーランク、スカルラティ、ヴァイス。
クリニックでBGMとしてかけているのは、
バッハやヴィヴァルディやモーツァルト、
コレルリ、ロカテッリ、トレッリ、ヘンデル、ゼレンカなどの
バロック〜古典派の作曲家が主体となっています。
バッハの次に好きな作曲家は、セルゲイ・ラフマニノフ。
時代としては「近代」に分類されます。
しかし、作曲の手法や曲想としては、
ショパンなどの「ロマン派」に近く、
独特のロマンティックな旋律に、複雑な展開、
超絶技巧を要する難解な作曲手法が特徴です。
そんなラフマニノフの代表曲
「コレルリ(あるいはコレッリ)の主題による変奏曲 Op.42」
ウラジミール・アシュケナージによる演奏。
哀愁を帯びた美しい旋律。
まさにロマンチック・ラフマニノフの真骨頂!
奏者は、ラフマニノフと出身国が同じ。
完全に手の内に入れています。
ラフマニノフが作曲した中でも、大好きな曲ですが、
タイトルには以前から疑問がありました。
テーマに使ったフレーズ
(冒頭の レ・レ・ミ・ド レ・レ・ド・レ・ミ)は、
アルカンジェロ・コレッリのオリジナルではなく、
もっと以前の「舞曲」に由来するものだったからです。
その舞曲は「フォリア」と言います。
彼が、「フォリア」を知らなかったと言うことはないと思いますが
コレッリの考えた主題だったと勘違いしていたため、
間違ったタイトルをつけてしまったと考えられています。
ラフマニノフを魅了したフォリアのテーマ。
400年前に作られた曲が、
ラフマニノフだけでなく、それ以前にも、
多くの作曲家のインスピレーションを刺激し、
作品に昇華させています。
そんなたくさんの作品の中から
いくつか紹介していこうと思います。
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フォリア(folia)は、イベリア半島起源の舞曲。
15世紀末のポルトガルあるいはスペインが起源とされるが、
いずれかは定まっていない。
「サラバンド」と同じく3拍子の緩やかな音楽。
「フォリア」とは、「狂気」あるいは「常軌を逸した」という意味があり、
もともとは騒がしい踊りのための音楽であったことが窺われるが、
時代を経て優雅で憂いを帯びた曲調に変化した。
「フォリア」は、低音部の進行及び和声進行が定型化されるにつれて、
これをもとに変奏曲形式で演奏することが広まった。
基本的に、短調。
イ短調の場合、A-E-A-G-C-G-A-Eという調子。
17世紀にはイタリアで大流行し、多くの作曲家が採り上げている。
このような手法は、「シャコンヌ」や「パッサカリア」などの変奏曲、
あるいは『パッヘルベルのカノン』とも共通するものである。
とくに、アルカンジェロ・コレッリの
『ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ』作品5の12曲中
最後に置かれた『ラ・フォリア』がよく知られる。
その後も各時代で扱われたほか、
「フォリア」とは明記されていないものでも、
「フォリア」の低音部進行を部分的に採用している曲も多い。
(from ウィキ)
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最初に取り上げるのは、「フォリア」の名前を広めた作品、
コレッリのヴァイオリン・ソナタ。
Arcangelo Corelli : ヴァイオリン・ソナタ 作品5第12番《ラ・フォリア》
(出版 : ローマ 1700年)
コレッリが、1700 年にローマで出版した
ヴァイオリン・ソナタ集(作品 5)
憂いを帯びた優美な低音主題にのせて、
緩急さまざまで多彩な変奏が行なわれる。
変奏数は23。
ヴァイオリンの名手だったコレッリ。
この曲には、ヴァイオリンの運弓(右手の動かし方)技法が
たくさん盛り込まれていて、
演奏する上でも、楽曲を聞く上でも
魅力にあふれた作品になっています。
バロックダンスの付いた動画で。
続いて同じ頃(1703年)にヴィヴァルディが作曲したトリオソナタ。
27歳の若きヴィヴァルディが、コレッリの作品を参考に作曲したと
考えられている。
変奏数は19。
アントニオ・ヴィヴァルディ : トリオソナタOp.1-12
《ラ・フォリア》ニ短調RV63
全体的に単調で、彼の後半生の作品に比べると
2本のヴァイオリンの絡みも少ない。
マラン・マレ(1656-1728)はフランスの作曲家。
ルイ14世の宮廷を舞台にヴィオラ・ダ・ガンバの名手として活躍し、
作曲家としても、オペラ、ヴィオルを中心とした
室内楽作品を多く残しています。
「スペインのフォリアによる変奏曲」は、
ヴィオル曲集第2巻に含まれています。
マラン・マレ:スペインのフォリアによる変奏曲
ヴィオラ・ダ・ガンバとテオルボという組み合わせ。
通奏低音を奏でるテオルボが上の音域、
旋律を奏でるガンバが下の音域なので、
全体にしっとりとしつつ重厚感のある演奏になっている。
少し時代を遡ってみます。
アンドレア・ファルコニエリ (1585-1656) :Ciaccona and Folia
カンツォーナ第1集(1650)に含まれるこの曲は、
前半部のシャコンヌから、フォリアへ。
コード進行は同じだが、ファルコニエリの作品では、
メロディーラインはコレッリやマレの作品に比べるとはっきりしない。
そのかわりに舞曲としてのテンポ感と激しさが備わっている。
アレッサンドロ・ピッチニーニ (1566-1638) は
イタリアのリュート奏者。
Alessandro Piccinini:Partite variate sopra la Folia aria romanesca
リュートの素朴な響きを生かしたシンプルな変奏曲。
アントニオ・デ・カベソン(Antonio de Cabezón, 1510-1566)
スペインの作曲家・オルガニスト
カベソン:Pavana Con Su Glosa
この曲の起源はフォリアや民謡で、
比較的厳格な形式になっている。
Folias Criollas(作曲者不詳、1500)
緩くフォリアの型は感じるが、かなり淡い。
パーカッションが入って、リズミカル。
フォリアが舞曲由来だということがわかる。
17世紀以降のコレッリやヴィヴァルディ、マレらの作品は、
後期フォリアと呼ばれ、テンポが遅くなり、
コード進行が一定の型になっている。
現在につながる「ラ・フォリア」の典型は、この頃に定着し、
その後の作曲家がこれをもとに作品を作っている。
大バッハは、農民カンタータの中に取り入れている。
J.S.Bach:「カンタータ(農民カンタータ)BWV.212」
ドイツ的な厳格さを備えた作り。
変奏はなく、あくまで歌伴として使っている。
フェルナンド・ソル(1778-1839)は、スペインの作曲家、ギター奏者。
ソルは、ギターの音楽レベルを可能な限り高め、
ギターを世に広める努力をした。
ギターのベートーヴェンと呼ばれる。
ソル:スペインのフォリアOp.15
C.P.Eバッハ (1714-1788)は、J.S.バッハの息子。
父の影響を最も受け、当時は父よりも有名であった。
特に鍵盤楽器作品が多く、200曲以上のソロ曲を残している。
C.P.E. Bach:
12 Variations on “La Folia d’Espagne” in D Minor, Wq.118, No.9(1778年)
フォリアの主題の使い方、変奏の独創性、
緩急の付け方などを取っても傑作と言って良い。
フランツ・リスト(1811-1886) は、言わずと知れたピアノの魔術師。
『ハンガリー狂詩曲集』に代表されるように、
リストは民謡などの土着音楽を収集し、それらをもとに作曲を行っていた。
『スペイン狂詩曲』もこの種の作品と考えて間違いない。
Franz Liszt:
Rhapsodie espagnole, S. 254 “Folies d’Espagne et jota aragonesa”
スペイン狂詩曲(スペインのフォリアとホタ・アラゴネーサ 1858年)
前半は、フォリアの低音部と和声進行をもとに変奏。
後半部分、速いテンポの「ホタ(スペインの民謡や舞踊のジャンル)」で
劇的な盛り上がりを作り、
前半のフォリアが長調で華やかに再現されて楽曲を閉じる。
現代の曲の中にもテーマが使われている作品や、
コード進行を取り入れている作品も多数存在する。
それだけ、人々の耳に残り、心に沁みる音楽だということなのでしょう。
「フォリア」のテーマを憶えて、曲の中でその主題の変奏される様を
比較して聴いてみるのも面白いかもしれません。
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「フォリア」のテーマを使った曲を書いた作曲家
ガスパー・サンス、ストラーチェ、A.スカルラティ、
フレスコバルディ、マラン・マレ、リュリ、
J.S.バッハ、ジェミニアーニ、C.P.E.バッハ、
サリエリ、ソル、リスト、ブゾーニ、
ラフマニノフ、ロドリーゴ
★ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」第2楽章にも
フォリアの和声進行が取り入れられている。
この動画の中では、5分41秒あたりから6分までの
バスのコード進行がそれにあたります。
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